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ふれんぞくさつじんじけん
不連続殺人事件
「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页
そこから裏門へ廻るつもりで坂道を降りてくると、裏門の前でバッタリ一馬に出会った。彼は禅寺前の間道の方からやってきた。
「やア、君か。今じぶん、おそいじゃないか」
一馬はビックリして、言葉をかけた。
「鉱泉宿へカルモチンを買いに行ってきたからさ。戦争中、売れ残っていたのを見かけたのだが、あいにく、お由良婆さまに先手をやられたあとさ」
「なるほど、そうか。あの鉱泉宿の残品も、近ごろはかなり知れてしまったからな。手紙で言ってくれれば買っておいてあげたのに。僕は草林寺へ妹の葬儀のことで話しに行ったのに、いくら待っても誰ひとりいない。本堂に腰を下ろして、三十分もぼんやり物思いにふけって来た始末なのさ」
表門の方の坂から懐中電燈がポカポカ動いてきた。海老塚医師であった。私たちを認めるとビックリたちどまって、今晩は、と言ったが、
「王仁豪傑も一片の煙となりましたか」ときいた。
王仁ついに一片の煙となる。私の内に快とするところだけれども、同じことをこのビッコの医者の奴が言うと、私の腹の虫がおだやかではなくなる。要するに王仁だけでなく、私たち全体を茶化し皮肉るところがあるせいで、こいつが何か言うたびに、私はポカリとぶんなぐってやりたくなる。