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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

私は然し、そのとき、ひどいことに気がついて、大いに混乱しはじめていた。

それは私が、一馬にも言ったが、さっき谷径を登って村道へ出て他の三人と別れるときも言ったことで、私は鉱泉宿へカルモチンを買いに、と言った。私はすっかり忘れていたが、王仁の場合には、ゲンノショウコに催眠薬がはいっており、又今日も、珠緒さんの屍体の枕もとには異様な白色の粉末がこぼれていたというではないか。

まるで私は、私がカルモチンか何か催眠薬を常用していることを故意にひけらかしているような次第で、何か如何にもヘタな芝居をしているようなアンバイである。みんなに疑られているのじゃないかという気がして、いかにも私は不快な、みじめな気持になった。

海老塚医師は土間の入口から別れたが、私たちが前栽を廻って洋館へ行こうとすると、母屋の表座敷、昼は葬場であった所に四名の坊さんが並び、多門老人と由良婆さまを混えて食膳についているではないか。

一馬は座敷の縁側へ近づいて、

「なんのこった。和尚さんはここでしたか。僕は又、知らないもので、三十分も本堂に腰かけてガンバッていましたよ」

「まったく詩人などという奴は世事にうとい奴じゃ」