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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

ヒラヒラふり廻してお見せでした。私は読みはしませんが。そして、六時ごろ、おでかけでした」

「どこへ?」

「存じません」

「誰ですか、男の方は?」

「申しあげては、いけないでしょう」冷然と言った。

一座は再び沈黙した。

海老塚が熊のようにユラユラと腕をふった。なんという変ったシグサだろう。昂奮のためであろうか。そして、飛び上るような激しさで、ふりむいた。スタスタとビッコの尻をふり、そして腕をユラユラふりながら、部屋から立ち去ろうとした。

と、廊下の入口で急にふりむいて、

「バカヤロー」

満身の絶叫だった。小柄のくせに、まったく気違いの蛮声、なんというハリサケルような声なのだろう。そして又、とびあがるようにふりむいて、歩き去った。

「ワハハハハ、ワハハハハ」

ピカ一が、気違いのように笑いだした。

「茶番だらけだ。なアに、殺人だって茶番じゃないか。ここのウチは、元々、ここのウチが茶番そのものなのさ。マジメなツラをしていられるかい。淫売宿と云いたいが、それどころか、まるでもう、性慾のカタマリ、色きちがいの巣じゃないか」

「ウルサイ! ゴロツキ! あんたは東京へお帰り! ただ今、さっさと帰ってちょうだい」