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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

あやかさんは怒りにふるえて、電気のようにビリビリ、神経がとびだすような激しさだった。

「何だと、このヤロー。もう一度、言ってみろ」

そう言い終ると、ピカ一の人相が変ってしまった。まさしく鬼だ。海老塚には殺人鬼のメスのような静寂があったが、ピカ一ときては、狂暴、人間の相ではなしに、鬼、狂いたつ野獣であった。

パッとハズミがついたとき、彼は躍りかかって、あやかさんをつかみあげ、大きく一回転振り廻して振りとばした。あやかさんはモノの二間も振りとばされて、四ツん這いにツンのめり、服はさけ、膝を打ち、起き上ることができなかった。

私たちが抱き起すと、すぐ起き上り、見かけによらぬ気丈なところのある人で、キッと顔をあげて、

「ゴロツキ! 犯人!」

「この野郎」

我々がアッと思ったときには、もうあやかさんがピシャリとぶたれて突きとばされたときで、まったく、こいつの腕力は矢のような早業であった。

然し、私たちがその次にアッと思ったときは、それどころじゃない。奴はいきなり、かたわらにある大きな花瓶をふりあげていたのである。

人見小六が武者ぶりついたから、よかった。ピカ一は花瓶をなげ下ろしたが、誰にも当らず、床にくだけて、ミジンにわれた。