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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

御承知の通り、うちの母は二度目の母で、僕の母が死んだ後お嫁にきて、だから年も僕と三つしか違わない、去年八月九日に四十二で死んだのだ。然し僕がこの母を殺す何の理由があるだろう。この母は元々ゼンソク持ちだった。心臓ゼンソクという奴だ。それが怖いものだから、海老塚というビッコの医者、これは落魄した遠縁の子弟だが、これに学費を給与して内科を学ばせ、五年ほど前、村へ住居を与えて開業させた。山中の無医村で開業するには内科だけじゃいけないので、外科も耳鼻科も眼科も、歯科まで一手に兼ねなければならないから、父などはあまり早くよびよせるのは反対で、全科にわたって一応習得させる時間を与える方が村のためだと云うのを、いいえ、私のためによぶ医者ですから、と云って、卒業後研究室に一年ぐらいいただけで強制的によびよせた。医者の当人が学究肌だから、それが非常に不服であったほどで、こっちへ来てから表面従順ではあったが、ソリが合わなかった。恩を忘れて不親切だと云って、母は医者を怒っていたが、逃げられると困るので、不満があるのも堪えていたようだ。ゼンソクという奴はひどい苦しみ方だから、腹這いにタタミをむしる。