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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

ほかに犯人の遺留品は見当らず、指紋もなかった。

現場の検視が終ったころ千草さんの遺骸と一緒に、県立病院の医師が出張して、草林寺の本堂を解剖室に仕立てて、新しい二つの屍体の解剖が行われた。

千草さんの殺されたのは十八日午後六時から七時の間、セムシ詩人の殺されたのは、夜の十一時から十二時ごろの間と推定されたが、内海は寝床の中でラクロの「危険な関係」を読んでいたらしく、本をふせて寝台を下りて、殺されたもののようで、便所へ立って戻ってきて殺されたのか、犯人を室内へ迎え入れて殺されたか、たぶん顔見知りの仲で、殺意を全く覚らぬうちに背後から脇腹を刺され、よろめいて、のめったところをメッタ刺しに刺しこまれ、心臓を刺された時はもう完全に死んだあとで、それを又、俯伏せに戻して頸を刺したらしい。つまり顔見知りの犯行なのである。だから蘇生を怖れて執拗にメッタ刺しに刺しぬいたに相違ないという話であった。

夕食後、午後八時半、カングリ警部は私たち洋館居住の全員を広間に集めて、

「さて、みなさん。こうなっては、もう礼節を重んじてばかりいるワケに行かなくなりましたよ。みなさんを容疑者の中から省くわけに行かない次第となりましたから、虚心タンカイに捜査へ御協力をお願い致す次第です。