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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

望月さんの火葬に読経が終って点火して引きあげてから夕食までのアリバイを立証していただく必要がありますが、まず総括的な情況について、巨勢さん、引き揚げた時は何時でしたか」

「それが、どうも、僕は性来ウカツ者ですから、めったに時計なんかのぞくことがないタチなんで、まア、アイビキの時ぐらい」

と博士が顔をあからめて苦笑すると、神山東洋が、

「私は時計を見ました。読経が終り、火をつけた、さア、帰ろうというとき、矢代さんが何時って、たしかそう若旦那、一馬さんですな、に、お訊きになった。そこで私が自分の時計を見ると六時六分、一馬さんは六時九分と仰言った。ところが、私の時計、モバードの安物ですが、一秒の十分の一と狂いのない掘りだし物でしてな、いかがですか、十万円なら、売ってもいいが、アッハッハ」

するとアタピン女史がキンキンとカン高い声をはりあげて、

「あら、矢代さん、腕時計をつけてらっしゃるじゃありませんか。どうして時間をお訊きになったの」

「きのうは机の上へ置いて出ましたからさ。アタピンさんは、自分の所持品を全部年中身につける主義ですか」

「なんですって、アタピンさんとは失敬な」