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ふれんぞくさつじんじけん
不連続殺人事件
「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页
すると警部の目はピタリと海老塚医師の上にとまって、
「海老塚さんは昨夜は大変御立腹とのことですが、なぜまっすぐ御帰りにならなかったのでしょう」
「私はまっすぐ帰りましたよ」海老塚の顔はまるで怒りに燃えているようだ。牙でもむきそうな感じである。カングリ警部はそんなことには無頓着、海老塚の両手のホータイに目をとめて、
「その手のお怪我はどうなさったのですか」
「ゆうべ、山径でころんだのです」
「海老塚さんは脚がお悪い御様子ですが、当家から病院まで、まっすぐ歩いて四時間半は時間がかかりすぎるようですな。昨夜当家をでられたのは九時半でしたね」
毎晩泊りこんでいた海老塚が、昨夜に限って帰宅していたとは初耳であった。私は思わず耳をそばだてたが、海老塚は、ギラギラと大きな目を顔一パイ光らせて、警部を睨んで返事をしない。
「間の悪いめぐり合せで、昨夜にかぎって急患があった。午前零時半です。病院から当家へ電話がきて、諸井看護婦が釣殿へ海老塚さんを探しに行ったが、居なかった。海老塚さんが帰宅したのはそれから一時間半後の二時だそうですが、その間、海老塚さんは、四時間半かかって帰宅の道を歩きつづけていらしたわけではないでしょうな」