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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

だいたい女、若い女というものは英雄愛好家だから、戦争ともなればただの娘も看護婦になって従軍するぐらいの夢は見がちのもので、看護婦ならみんな戦地へ志願しそうな鼻息のものだが、この諸井という女は別で、凡そ架空な夢の少い、冷めたい女であった。男の冗談などには取りあいもしない。五尺四寸五分だとか、日本の女に珍しい延び延びして均斉のとれた美事な体格で、顔もまずくはない。漁色漢の望月王仁は、ああいう女はムッツリ助平と云って、冷めたく取り澄しているくせに内心は淫らなものだ、案外ウブなもんで変に情熱があって一晩はよろしいものだ、などと大いに働きかけたが、全然手ごたえがなかった。

戦争になって看護婦というものが戦地へ駆り立てられひどく貴重品になったとき、東京のかかりつけの病院にいたこの看護婦が戦地へ徴用されちゃイヤだなとこぼしていたので、無医村の看護婦という立派な口実に許可を得て連れてきて、海老塚医院へおかず、自宅の一室を与えて昼だけ医院へ通わせる。自分の都合もあるけれども、外にも名目があってこの家には外に二組の病人があった。

一つはここへ疎開の南雲一松という老人がここへ来てから中風で寝ついている。