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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

モルヒネはプリンの中に煮こまれていたもので、製品の上へ誰かがふりまいたという性質のものではなかった。

「でも、想像もつきませんわ。私がプリンをこしらえているあいだ、別に何事もなかったのですもの。その場から離れた覚えもございませんし、怪しいこともございません」

「いつごろですか。プリンを作られたのは」

「四時ごろかと思います。刑事の方がお見えになって矢代さんにお会いしたいと仰言いますので、矢代さんのお部屋へ参りまして、居合していらした加代子さんと御挨拶などして、それから調理場へ行きましたの。先ずプリンを作って冷蔵庫へ入れました」

「奥様、もしや、お砂糖に」

と坪平のオカミサンが言葉をはさんだ。あやかさんは目を大きく見開いてオカミサンの顔を見ていたが、上気して、目の輝きがましてきた。

「いったい砂糖がどうしたのです」

と、カングリ警部にきかれて、坪平のオカミサンが答えた。

「旦那様はおからだにいけないそうで、普通のお砂糖は召上らぬ習慣でした。ビート糖を用いまして、旦那様の召上り物に限って、お砂糖だけは特別の砂糖壺のお砂糖を用いる例に致しておりますのです」

ただちに食堂のお砂糖、お醤油、メンミツな調査が行われたが、多門老人の砂糖壺に限って、注意して見ればそれと分る多量のモルヒネが混入されていることが発見された。