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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

砂糖壺は一貫入りのガラス壺であるが、砂糖はまだ、半分はいっており、この日までは、料理に用いて異常のなかったものであった。

「プリンに砂糖を用いたほかに、別の料理に用いましたかね」

「夕食の召上り物にはほかに用いておりません」

と坪平が恐る恐る答えた。彼は顔色を失っていた。

「プリンの前に、砂糖を用いたのはいつごろでしたね」

「御昼食の紅茶には用いました。御昼食はサンドウィッチでしたので、二合の牛乳にジカに紅茶とお砂糖を入れて煮ましたが」

「相当多量に用いたわけだね」

「まア、左様です。プリンに用いる分量ぐらいは用いたろうと思いますが」

「歌川さんはそれを全部のみましたか」

坪平が答えることができずにいると、下枝さんが、

「全部お飲みでした」

「あなたがお給仕したのですね」

「ハイ」

「そのあとに別に異常はなかったのですね」

「ございません」

「紅茶の支度はいつごろでした」

「旦那さまの昼食は十二時半、夜食は八時と定めてありまして、その十分前ぐらいに、いつも下枝さんがお膳をとりに参られますから、間に合うように用意いたしております。ちょうど十二時半十分前に出来たろうと思いますが」