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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

あのとき私は気がかりでしたが、海老塚さん、あなた方は靴をぬいで母屋の方から来られたのでしたな。ハダシで歩いて行きましたか」

海老塚医師は光る眼玉をグルグル廻しているだけで、返事をしなかった。

「これだけの前奏曲があってから、いよいよ本景に取掛かるのですが」

するとピカ一がさえぎって、

「その次のことは、オレに言わせて貰おう。食事の終りに近いころになって、当家の令夫人が京子さんに耳うちして二人そろって食堂を出て行った。まもなく戻ってきて、今度は、矢代君、一馬君、巨勢君を語らって五人で食堂を出て行った。そのあとで、急にゴチャゴチャして、まだ二三人出入があったが、それは僕はよく記憶がない。そのときコーヒーが運ばれていたのだ。警部さん、よくきいて下さいよ。私のコーヒー茶碗だけは目ジルシがあるのだよ。フチがかけているのだ。コーヒー茶碗を一打ほどブッコワしたのは正しくオレだけれども、然し、これだけの大家に、代りがないとは、おかしいじゃないか。一週間ほど前から、あんたがコワしたのだから、これはあんたのよ、と云って、必ずかけたコーヒー茶碗を持ってきやがる。そこにいる女中めが、そう言いおるのでさ。