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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

「御不浄へ参ったのです」

仕方なしに、あやかさんが言った。

「一人で参るのが心細かったものですから、京子さまにお願いして一緒に行っていただいたのです。便所の窓から、ふと滝のうしろの山の方を見ましたときに、誰やら、人の姿が隠れたのが見えたのです。あそこには、アズマヤに一ヶ所、そのほか燈籠に二ヶ所ほど灯がありますので、部分によってホンノリ見えるところと暗闇と入り交っておりまして、私の見た人影はちょうどその境界のあたりに当っておりましたから、瞬間のうちに暗闇へ消え隠れてしまったのです。こんな場合でございますので、怖しくなって、主人や矢代さんや巨勢さんに来ていただいて、ちょうど長畑刑事もいらしたので、調べていただきましたのです」

カングリ警部はうなずいて、

「ヨミスギは、さっそく、調べてきたのだね」

「ハア、さっそく駈けつけてみましたが、もう人影は見当りませんでした。なにぶん、直線に駈けつけるわけには行かないところで、洋館をひと廻りして、おまけに、庭の径ときては迷路のようなものですからな」

「それは一人じゃ、手に負える筈がないから、仕方があるまい」

カングリ警部は部下をいたわった。