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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

「いくらか惚れてはいたろうさ。あいつが何をどの程度に思いこんでいるか、あんな、ひねくれ者のことは、私は考えてみたくはないよ」

「まったく、大作家ともなると、気むずかしくて、つきあいにくいですな」

全然あらゆる人間を疑っているようなものである。私も、いささか、ウンザリした。私はどうも巨勢博士を買い被りすぎたと思った。これにくらべて、さすがにカングリ警部ともなると、軽率なところがなくて、慎しみ深く、何か我々の分らぬ狙いをつけて、一途に掘り下げているような、たのもしさが感じられる。

ある朝私が三輪山の方へ散歩にでると、危っかしい様子の男女の老人が二人、もつれるように道の上にうずくまるようにしている。見ると、お由良様、もう一人の男の方は私の始めて見る人だが、お由良様の夫の南雲老人に相違ない。

私がすすみよって、どうかしましたか、ときくと、お由良様は困りきった顔にホッとした色を浮かべて、

「無理に歩いてみましたら、この有様で。年寄は十日前には出来たことが、今日はもう出来なくなっているのですよ」

「あなたは御病気という話でしたが」

「ええ、さいわい今朝は気分がよかったものですから。