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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

私が手をだすと、それにつかまって、起き上った。なんなら、背負ってと思ったが、痩せてはいても、五尺八寸からの大男で、

「じゃア、喜作じいさんにたのんで、車でも廻させましょう」

「いや、いや、これで、充分、歩けまする」

私の肩に縋って、歩きだした。

「諸井さんは、ジャケンな人ですのよ。患者の散歩といえば、附添って歩いてくれるぐらいの思いやりがあるどころか、途中で死にたかったら勝手に、と言う人ですからね。それに強慾無道なのですよ。チップをはずめば、どんなことでも、致しますよ。まとまったお金でも握らせてごらんなさい。あの人は一服もるぐらいのお手伝いでも、平然とやりかねない鬼ですのよ」

オジイサンも私の肩に縫ってフウフウやりながら、苦しい息からムリに声をしぼって、

「ウム、そうじゃ」

よっぽど諸井琴路なるものが口惜しい存在であるらしい。

「身持は、どうですか」

ときいてみると、

「身持って、あなた。あんな人に身持なんか、あるものですか。私の兄(多門のこと)はもともとあれが病気の人でありましたが、それは別として、海老塚さんも、あの人の身持がよかったら、本妻にも直したでしょうよ。