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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

「矢代夫人も御買物ですか」

「いいえ、私、お友達をお訪ねしましたのです。二三年前、この土地に住んでおりましたから、そのころのお友達で、本間という呉服屋の奥様。私昨日はズッとそこにおりました」

カングリ警部は頷いて、次に、諸井看護婦に、

「私はどうも、あなたに物をお訊きするのが苦手だなア。まさか、あなたは、患者たちにも、警官なみに突き放して答えるわけではないでしょうな。あなたは、どちらへ、おでかけでしたか」

「昨日は日曜の休診日で、薬を仕入れに参りました」

「それだけの御用件で終発まではかからないと思いますが、できるだけ、こまかく教えていただきたいものです」

「あとは、ブラブラしていました。こんな山奥から町へでれば、誰しもブラブラ致します」

「いや、ごもっとも。あなたの仰言ることは、いつも、ごもっともで、恐縮です」

カングリ警部は如才なく応酬しながら、各人のN町のアリバイについて、こまかく一々訊ねかけたが、結局、ハッキリしているのは京子だけ、木曾乃さんは色々の買物をしたり、ひやかしたりしたが、顔見知りがいるわけでもないので、先方が覚えていてくれなければ、どうにもならない。