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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

彼は指さした手を槍の如くに構えたまま、実際、木ベエの耳の下を指先でグリグリ突きまわした。

「偽善者! 三宅木ベエ!」

もう一度、さらに大喝一声して、

「八月三日、日曜日、汝、三宅木ベエ、N町に於いて、諸井琴路と密会したぞ。汝、先日、余を罵って、何と叫んだか。汝、正義の仮面をかぶり、妻の不貞を罵りつつ、諸井琴路と密通致しておるではないか。これ! 汝、偽善者、三宅木ベエ! 返答いかに。これ! 汝、偽善者! 三宅木ベエ!」

そのとき、神山東洋が、母屋をまわらず、外から食堂へ、扉をあけて、はいってきた。彼は呆気にとられて、見ていたが、やがて、面白そうに笑いだした。

「偽善者、三宅木ベエ。アッハッハ。傑作! 傑作! お次は、何です。海老塚先生。お次の文句は、私が教えてあげようか。気の毒ながら、密通のやり損じ、実は、ふられ男というのでさア。アッハッハ」

海老塚も神山東洋の傍若無人の差出口に一時は呆気にとられたが、神山の言葉が終ると、委細かまわず、再び腕をつきさして、ハッタと三宅木ベエを睨み、

「返答いかに! 汝、偽善者、三宅木ベエ!」

珍らしく、自動車の警笛の音が玄関の方にひびいていたが、カングリ警部の一行が、どやどやと乗りこんできた。