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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

警官の一行を見ると海老塚は調子づいて、ハッシと木ベエを指さし、

「諸君! 見よ! 偽善者、三宅木ベエ! 彼、正義の仮面をかぶり、余を罵り、妻の不貞を罵り、彼、偽善者は、諸井琴路と、密通いたしておるぞ」

烈々たる気魄をこめて、偽善者木ベエを指し示したが、警官が左右に寄りそって、腕をとらえたのは、海老塚その人であった。

「汝ら、何をするか! コラ! 無礼者! 見よ! そこに、彼こそ、偽善者! 正義の仮面をかぶり」

八丁鼻と南川友一郎巡査は、左右から各々両腕をかかえて、小さな海老塚を吊り上げるように、抑えてしまった。

カングリ警部が、すすみでて、

「海老塚さん。お気の毒です。一応同行していただかなければなりません」

腕をとられた海老塚はバタンバタン足をならして、

「何を、汝ら、ねぼけるか。そこにおる、彼、三宅木ベエこそ、世を偽る、偽善者であるぞ。汝ら、無礼者」

「イヤ海老塚さん。警察は、偽善者をどうすることもできないのです。それは、お釈迦様やキリストの領分でして」

とカングリ警部は笑って、

「お気の毒ですが、偽善者をさしおいて、我々は先ず、傷害犯人をつかまえなければならないのです。