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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

「君は、何かい、鉱泉宿へも私のことを取り調べに行ったそうだが、そうやって、みんなのアリバイを調査しているのかね」

と、私が神山東洋にきくと、

「ええ、そうでさア。根が弁護士ですから、こんなことが好きな性分なんですなア。私はF町も調べました。一馬さんはアリバイがありましたな。丹後先生はダメ。丹後先生はヤッパリ、十二時二十分という奴にお乗りだったんですよ。道の上へフラフラと飛びだしてきて、こうユラユラと泳ぐみたいに手をふってネ、自動車の車掌も運転手もよく覚えていましたよ。だが三宅先生。あなたは然し、諸井嬢のことはとにかく、バスの始発の件ですなア。あなたは始発には乗りませんでしたね」

神山は木ベエを見つめたが、木ベエは相手にならず、全然返答の様子がない。

「海老塚医師が諸井嬢と三宅先生の仲を疑りだした。疑る根拠はあるのです。なぜなら、三宅先生は始発でなしに、十二時四十分、つまり、海老塚医師と同じバスでN町へ行かれたのです。つまり三宅先生は七時半前に当家を出発された。然し、十二時四十分まで、この村のどこかにおられた筈です」

木ベエは又、答えなかった。答えようともしなかった。