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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

心病める醜婦のために、という題なんですってさ。いいでしょう。うんと私を讃美するのよ。そうすれば鉄拳の必要はいらないのですもの。からかわれたことがないのですから。その代り、私も陽気なセムシを讃美礼讃してあげるわね」

と千草さんが言った。私はどうもこの、醜いお嬢さんが好きになれない。心がひねくれているのである。卒直正直のようで、実は言ってることがみんなアベコベで、自分のことを醜婦と云うが、内々はウヌボレがあり、自ら醜婦と称するだけ、卑屈にひねくれているのである。

「心痛めるだけ余計だよ。僕のは、ただ、醜婦のために歌えるというのさ」

「あら、柄になくテレるわね。二人の時は色んなことを仰言るくせに」

「醜婦が醜男を口説いちゃだめだよ。醜婦は美男のために人知れず胸をこがし、醜男は美女のために悶死するところがネウチなんだよ。僕にくらべりゃ、シラノなんぞは醜男のうちじゃないのだからな。詩も僕よりは巧そうだ。僕には取柄がないな」

内海は両手で頭をかかえた。彼の指は細く長く、節くれていた。両手で頭をかかえると、両手の中に顔全体がおさまるぐらい、彼の顔は小さかった。セムシ詩人は立上った。