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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

「ゲンノショウコは誰が煎じる習慣でしたか」

「王仁さんは珠緒さんが御招待したお客様ですから、珠緒さんが御自分でおやりになるか女中に命じて作らせるか、いずれかでしたけど、先月の終りからツボ平さんがお客様方専門のコックに来て万事やって下さるようになってからは時々ツボ平のオカミサンも煎じていたようでした。朝と晩、二度煎じる習慣でしたの。王仁さんはお茶もお水も一切召上らず、アルコール以外の液体はゲンノショウコ一点ばりなんですから」

あやかさんがこう説明するのをひきとって、千草さんが、

「ゆうべ、じゃなかった、おとといの夕方か、ゲンノショウコを煎じたのは珠緒さん御直々ね。私もお料理のお手伝いをしていたのよ。コンロが足りなくなったから、ツボ平のオカミサンが珠緒さんのところへゲンノショウコを下していいか訊きに行ったのです。あの方は御自分でやってることに人が勝手に手を入れると御機嫌すこぶるナナメだから、一々お許しを受けにでかけなければならないのよ。すると珠緒さんがオカミサンと一緒にきて火から下して、冷したあとでフラスコへうつしたのです。あのとき、あやか様もいらしたわね」