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ふれんぞくさつじんじけん
不連続殺人事件
「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页
そして解剖の結果は、胃の中にもモルヒネはなかったし、吐いた汚物にもモルヒネはなかった。
王仁が殺された時には、私の如きはただいい気味だと思ったばかり、屍体を眺めても溜飲が下るばかりで、こいつホントに死んでるのかな、騙されてるんじゃなかろうな、そんな心配まで浮かんだような有様だった、私ばかりの話じゃなかろう。王仁の消えて失くなることは先ずもって大方の希望であったに相違ない。
私と王仁は作風が全然違っているから、私を悪く評する者は王仁をほめる。王仁にお点の辛い評家は私に高く採点する。というぐあいに、こういう立場の作家同志は徒党的な対立意識はあっても、本当の嫉妬というものは少いのである。作風がくい違っているから、本当の敗北意識というものがないのだ。
そこへ行くと、丹後弓彦と王仁はどちらも腕力型の才筆で、人間を扱う角度や発想の角度が同型であるから、こういう場合にはぬきさしならぬ勝敗感があるもので、王仁の野性奔放な才筆に圧倒されがちな丹後には、痛烈な嫉妬があったに相違ない。作家の嫉妬は他人の名声流行などには案外淡泊で、もっと本質的なぬきさしならぬ才能に絡みついた問題だから、苦しいものだ。