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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

私たちの洋館でも、南面の部屋はさほどでないが、北面の私の部屋などは、いささか音に悩むことも多いのである。

我々文士は一種の精神分析派で、思いつめればドイツコイツの区別なく犯罪者に見えないものはなくなるというタチだから、あれからこれへと犯罪に就いて考えても埒のあくものではない。

朝食がすんだら遊びにきてくれという歌川多門老からの話も、この騒ぎではどうしたものか、ちょうど幸い、行かずに済ませるつもりにしていると、又、下枝さんがやってきて、御都合よろしかったら御越し下さいませ、という。

「下枝さん。とんだことになりましたね」

「ええ」

下枝さんは、あどけないリンカクの美しくととのった顔をあげて、私を見た。その目は利巧で、よく澄んで、静かで、正しく美しいものだけをいつも見つめ考えているような目であった。

この可愛いい、あどけない娘が、ほんとうに多門老人の妾なのだろうか? 私は信じられなかった。このカラダは、まだ、娘のカラダである。

「歌川さんはビックリ取りみだしていられやしませんか」

「いいえ。もう落着いて、いつもと同じ御様子でいらっしゃいます」

私たちが出向いてみると、まったく多門老人は、ふだんと変らぬ様子に見えた。