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ふれんぞくさつじんじけん
不連続殺人事件
「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页
女だとは分ったけれども、誰だかまったく見当がつかない。ところが、しばらくたつと、今度は釣殿から男が出てきた。先ず池の水で手を洗う。これは海老塚医師です。半ソデシャツにズボンをはいていた。ハンケチで手をふいて、庭の山の方へ登りかけたが、ふりむいて、女の消えた方へ去って行った。私の見たのはそれだけだが、私はそれから十分ぐらいそこにいて、戻ってきたから」
夢殿というのは、多門老人が聖徳太子の夢殿に模して小型にちぢめてつくらせたもの、釣殿というのも大和のなにかの堂を模してつくらせた茶室で、中には畳のしかれた部屋と支那風の卓とイスをおいた部屋と二つあった。
「そう。それじゃア、海老塚さんは昨日も釣殿へ泊ったのだね。近ごろは殆んど毎晩泊ってるんじゃないかな。僕は気にかけた事がないから、村の誰かがウチのどこかへ泊っていても分らない。別に一々主人の許可をうけるというような堅苦しいことはこのウチの習慣にはないことで、主人側と召使側と二つの生活が独立しているのだ。海老塚さんはこのウチでは家族の一員のようなものだから、夜ぶん遊びに来たときは先ず大概は泊って行く。医院まで山道で一里もあるうえビッコだからムリもない。