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ひかりはかげを

光は影を

岸田 国士

彼を待つもの「キング 第二十六巻第四号」1950(昭和25)年4月1日、はるかなる青春「キング 第二十六巻第五号」1950(昭和25)年5月1日、〔欠題〕「キング 第二十六巻第六号」1950(昭和25)年6月1日、兄の立場「キング 第二十六巻第七号」1950(昭和25)年7月1日、ある少女の役割「キング 第二十六巻第八号」1950(昭和25)年8月1日、父の孤独「キング 第二十六巻第九号」1950(昭和25)年9月1日、愛と死と生の戯れ「キング 第二十六巻第十号」1950(昭和25)年10月1日、運命に逆うもの「キング 第二十六巻第十一号」1950(昭和25)年11月1日、変転の外に「キング 第二十六巻第十二号」1950(昭和25)年12月1日、この日あるがために「キング 第二十七巻第一号」1951(昭和26)年1月1日、二つの未来図「キング 第二十七巻第二号」1951(昭和26)年2月1日、希望の羽ばたき「キング 第二十七巻第三号」1951(昭和26)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 138,262 字 · 276 页

青空文庫

手紙にはたいてい、父の教訓めいた簡単な文句と、たどたどしい母の繰り言と、妹や弟の、その時の都合での紋切型の挨拶が同封してあつた。

父は小学校の校長を停年でやめて、それまで郷里に持つていたいくらかの家屋敷を売り払い、東京の荻窪へ、小さな住居と貸家を二三軒建て、裏の空地で養鶏をはじめていた。彼が外国語学校へ通うようになつて、一家の財政は、可なり困難のようであつた。家賃の取立てが思うようにならぬのが原因であつた。彼は、父に無断で学校をやめ、友人の伯父の経営する土建会社に事務員としてはいつた。父はそのことを賛成もせず、また強いて反対もしなかつた。彼は、自分が長男だという意識を、それほどはつきりもつて行動したわけではなかつた。しかし、時がたつにつれて、それは自然に彼の胸中に、一種の強制、自発的ではあつたが、絶対の力に抗し難いことを覚つた忍従のかたちで、もたもたしたものを残さずにおかなかつた。

彼の父、京野憲之は、在職中、師範出の、県下でも優秀な校長で通し、いわゆる政治的手腕なるものも認められていたらしく、多少は教育界のボス的存在であつたが、職を退くと、今度は、一転して、算盤を手から放さぬようになり、養鶏のかたわら、実用新案の工夫に没頭したり、怪しげな株を買い込んだりしていた。