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ひかりはかげを
光は影を
岸田 国士
彼を待つもの「キング 第二十六巻第四号」1950(昭和25)年4月1日、はるかなる青春「キング 第二十六巻第五号」1950(昭和25)年5月1日、〔欠題〕「キング 第二十六巻第六号」1950(昭和25)年6月1日、兄の立場「キング 第二十六巻第七号」1950(昭和25)年7月1日、ある少女の役割「キング 第二十六巻第八号」1950(昭和25)年8月1日、父の孤独「キング 第二十六巻第九号」1950(昭和25)年9月1日、愛と死と生の戯れ「キング 第二十六巻第十号」1950(昭和25)年10月1日、運命に逆うもの「キング 第二十六巻第十一号」1950(昭和25)年11月1日、変転の外に「キング 第二十六巻第十二号」1950(昭和25)年12月1日、この日あるがために「キング 第二十七巻第一号」1951(昭和26)年1月1日、二つの未来図「キング 第二十七巻第二号」1951(昭和26)年2月1日、希望の羽ばたき「キング 第二十七巻第三号」1951(昭和26)年3月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 138,262 字 · 276 页
しかし、それを一概に、老年の物欲へ走つたものとみることはできなかつた。発育盛りの二男三女を抱えて、一家の経済は既に危急を告げていたのである。まずまず、善良な父であり、夫であつた。時に我田引水とみられる処世理論で、ねちねちと家人を悩ますことはあつても、決して荒い言葉で怒りを爆発させることはなく、家の掃除から、夜の読書まで、率先躬行をもつて、厳しく範を垂れ、自らそれをなによりのほこりとしていた。
数えてみると、今年はもう五十七になる。母は、生きているとすれば、五つ違いの五十二、七年前に、もう、父とおなじ半白の頭髪を、自分で染める気にもならぬらしかつた。なにごとにも目立たぬように気を配るのが特色で、父と並んで坐る時は、きつと、この蔭に半身をかくすほどであつた。よほどの必要がなければ、買物以外に外へ出たためしはなく、親戚のものでもなければ、客と対座するのが苦痛のようであつた。そのくせ、子供たちの面倒は至つてよくみる方で、男の子と女の子の区別を、些細なところまでちやんとつけ、男はまあしかたがないけれど、というのが口癖で、娘たちは、その点、母を旧式のこちこちと批難しながら、一方では、なんでもその母に倚りかゝつていた。