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ひかりはかげを

光は影を

岸田 国士

彼を待つもの「キング 第二十六巻第四号」1950(昭和25)年4月1日、はるかなる青春「キング 第二十六巻第五号」1950(昭和25)年5月1日、〔欠題〕「キング 第二十六巻第六号」1950(昭和25)年6月1日、兄の立場「キング 第二十六巻第七号」1950(昭和25)年7月1日、ある少女の役割「キング 第二十六巻第八号」1950(昭和25)年8月1日、父の孤独「キング 第二十六巻第九号」1950(昭和25)年9月1日、愛と死と生の戯れ「キング 第二十六巻第十号」1950(昭和25)年10月1日、運命に逆うもの「キング 第二十六巻第十一号」1950(昭和25)年11月1日、変転の外に「キング 第二十六巻第十二号」1950(昭和25)年12月1日、この日あるがために「キング 第二十七巻第一号」1951(昭和26)年1月1日、二つの未来図「キング 第二十七巻第二号」1951(昭和26)年2月1日、希望の羽ばたき「キング 第二十七巻第三号」1951(昭和26)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 138,262 字 · 276 页

青空文庫

「いゝですよ。僕は寝るところさえありやいゝ。どうせ、じつとしてはいないんですから……」

「何か仕事のあてでもあるのか」

と、父が口を出す。

「えゝ、まあ、なんとかするつもりです」

「そう急がんでえゝ。これで、終戦まではどうなるもんかと思つたが、近頃、どうやら、芽が出て来たよ。暮し向きのことは当分心配せんでええ」

「そんなに景気がいゝんですか」

「いや、それほどでもないがね」

すると、母が、

「なんでも、粉の方が当つたらしいんでね」

「コナ?」

「製粉……ウドン粉を作る会社よ」

と、母は、やゝ得意らしく説明する。

なるほど、そう言われれば、さつき玄関から座敷へ通る間にも、なにかほつとしたものを感じた。それは、ゆたかさとまではいかぬにしても、思いがけぬ見た眼のゆとりが、住居の空気に漂つていることを、彼は異様にさえ思つたのである。時節柄というハンディ・キャップもあるにはあつた。先ず新調と覚しい家具置物、張り替えて間もない畳、唐紙、そして、火鉢には盛りあがるような炭火。彼の記憶では、わが家にしては例のなかつたことである。

「あゝ、兄さん、僕は、兄さんさえよけれや、一緒の部屋でもいゝよ。