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ひかりはかげを

光は影を

岸田 国士

彼を待つもの「キング 第二十六巻第四号」1950(昭和25)年4月1日、はるかなる青春「キング 第二十六巻第五号」1950(昭和25)年5月1日、〔欠題〕「キング 第二十六巻第六号」1950(昭和25)年6月1日、兄の立場「キング 第二十六巻第七号」1950(昭和25)年7月1日、ある少女の役割「キング 第二十六巻第八号」1950(昭和25)年8月1日、父の孤独「キング 第二十六巻第九号」1950(昭和25)年9月1日、愛と死と生の戯れ「キング 第二十六巻第十号」1950(昭和25)年10月1日、運命に逆うもの「キング 第二十六巻第十一号」1950(昭和25)年11月1日、変転の外に「キング 第二十六巻第十二号」1950(昭和25)年12月1日、この日あるがために「キング 第二十七巻第一号」1951(昭和26)年1月1日、二つの未来図「キング 第二十七巻第二号」1951(昭和26)年2月1日、希望の羽ばたき「キング 第二十七巻第三号」1951(昭和26)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 138,262 字 · 276 页

青空文庫

そうするより仕方がないもの。お父さんは、あの部屋、明けられないだろう」

と、弟の深志が、だしぬけに言いだした。

「うむ、いや、別に明けられんこともないが、あの山のような荷物をどこへ始末するかだ」

父は座敷は客間としてだけ使いたい平生からの意向で、自分が居間にしている次の間を明け渡すのが、すこし億劫らしかつた。

「山のようなつておつしやるけど、たいがいお使いにならないものばかりでしよう。物置をちよつと広げればなんとかなりますよ」

「それや、そうだ。もう一と間ほしいな、この家も……」

「あたしだつて、一人のお部屋ほしいわ」

と、下の妹、真喜が甘えるように言つた。

「贅沢言えばきりがないさ。そんなら、あたしのお部屋は、いつたいどこ?」

母が、あつさりとたしなめる。

「母さんは、家全体がお部屋みたいなもんよ」

「うまいことを言う」

父がほめた。

で、結局は、物置の建て増しをするまで、弟と一緒にということになる。

その間、始終、黙つて、話題に無関心な風をみせていたのは、上の妹の多津であつた。京野等志は、さつきから、この年頃をすぎた妹の存在と、なにか神秘めいた影を匂わせている表情とが頭にこびりついていた。