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ひかりはかげを
光は影を
岸田 国士
彼を待つもの「キング 第二十六巻第四号」1950(昭和25)年4月1日、はるかなる青春「キング 第二十六巻第五号」1950(昭和25)年5月1日、〔欠題〕「キング 第二十六巻第六号」1950(昭和25)年6月1日、兄の立場「キング 第二十六巻第七号」1950(昭和25)年7月1日、ある少女の役割「キング 第二十六巻第八号」1950(昭和25)年8月1日、父の孤独「キング 第二十六巻第九号」1950(昭和25)年9月1日、愛と死と生の戯れ「キング 第二十六巻第十号」1950(昭和25)年10月1日、運命に逆うもの「キング 第二十六巻第十一号」1950(昭和25)年11月1日、変転の外に「キング 第二十六巻第十二号」1950(昭和25)年12月1日、この日あるがために「キング 第二十七巻第一号」1951(昭和26)年1月1日、二つの未来図「キング 第二十七巻第二号」1951(昭和26)年2月1日、希望の羽ばたき「キング 第二十七巻第三号」1951(昭和26)年3月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 138,262 字 · 276 页
考えれば、それは不思議でもなんでもない。古い「家」の重圧から解放され、不必要にまつわりつく肉親の眼から逃れ出た、一つの若い生命の跳躍が、そこにみられるからであつた。
京野等志は、腕組みをして、じつと眼をつぶつた。両親をはじめ、家族の一人一人の面影が瞼に浮ぶ。それらの一人一人が、多かれ少なかれ「家」を愛し、そして、「家」を憎んでいた。春の風が、ある時は、あの「家」にも吹いたに違いない。しかし、あの家に吹き荒んだ冬の風を、誰が一番多く身に受けたろう? 美佐か? 深志か? それとも、母か?
彼は、ふと、あれから久しく顔をみない弟深志の安否が気になりだした。そして、いつか、今日の真喜のように、眼を輝やかしてこゝへ訪ねて来ないものかと思つた。
窓のしずかに開く音がした。
朝の化粧をすました小萩の顔が、そこからのぞいていた。
「トシ、そこでなにしてらつしやるの? お湯がもう沸いたわ」
「あ、そうだ、忘れてた。失敬、失敬……。もう起きるの? 今日はメチャクチャにいゝ天気だぜ」
「気のせいかしら? 花の匂いがするわ。なんでしよう?」
眼を細めて、小萩は、その匂いのする方角を見定めようとしている。