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ひかりはかげを

光は影を

岸田 国士

彼を待つもの「キング 第二十六巻第四号」1950(昭和25)年4月1日、はるかなる青春「キング 第二十六巻第五号」1950(昭和25)年5月1日、〔欠題〕「キング 第二十六巻第六号」1950(昭和25)年6月1日、兄の立場「キング 第二十六巻第七号」1950(昭和25)年7月1日、ある少女の役割「キング 第二十六巻第八号」1950(昭和25)年8月1日、父の孤独「キング 第二十六巻第九号」1950(昭和25)年9月1日、愛と死と生の戯れ「キング 第二十六巻第十号」1950(昭和25)年10月1日、運命に逆うもの「キング 第二十六巻第十一号」1950(昭和25)年11月1日、変転の外に「キング 第二十六巻第十二号」1950(昭和25)年12月1日、この日あるがために「キング 第二十七巻第一号」1951(昭和26)年1月1日、二つの未来図「キング 第二十七巻第二号」1951(昭和26)年2月1日、希望の羽ばたき「キング 第二十七巻第三号」1951(昭和26)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 138,262 字 · 276 页

青空文庫

そういえば、長久保夫人の近況は知つているか。先月末に盲腸の手術を受けて、目下松本県立病院に入院加療中の由だ。経過ははじめ順調と聞いていたが、予定よりすこし長びいているのは、どうしたわけか。別に容態悪化という話は聞いていない。

話は前に戻るが、問題の娘は、百瀬しのぶ、二十歳、もちろん実家は百姓、没落組の地主だが、父親は身勝手な自由主義者の一人、小生の血を分けた兄で、同時に、不倶戴天の政敵だ。お含みを願う。

京野等志は、実は、この手紙を読みおわつた瞬間、文学志望の娘、百瀬しのぶとやらのことよりも、病院のベッドで呻いているかもしれぬ長久保小萩のことで頭がいつぱいになつていた。彼は、すぐにも松本へ飛んで行きたい衝動にかられたが、相手がどの程度にわるいのかを考えると、軽率に病床をさわがせるのは心なきわざのように思われた。

それにしても、と、彼はやつと、百瀬秀人の依頼のすじを、もう一度真面目に取りあげ、漠然とながら、その娘の希望を読みとり、自分にいつたい何ができるかを考えてみた。

いくら考えてみても、身近にこの娘を托すべき人物は見当らなかつた。文学の修業といつても、常識からいつて、必ずしも文士の家へ弟子入りをしなければならぬと限つてはいない。