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ちからもち

力餅

島崎 藤村

「力餅」研究社、1940(昭和15)年11月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 65,974 字 · 130 页

青空文庫

その漢学者のむすこさんは年若でなくなったそうですが、惜しまれた人のようです。その人のうわさをわたしにして聞かせて、学問にはげむ心を起させたのも、またこのおばあさんでした。

なんと、皆さん、吉村のおばあさんの雷さまは、八十幾歳の老年になっても、まだ遠くのほうでゴロゴロ鳴っていましたよ。おばあさんがその年ごろには、養子にあたる吉村のおじさんもなくなり、実の娘のおばさんも先になくなりまして、おばあさんから言えば孫にあたる今の吉村さんの代になっていましたが、まだそれでもおばあさんだけはたっしゃでいました。吉村さんも心がけのいい人ですから、両親のためにいいお墓を造ってあげようと思いまして、長いことかかって思うとおりなものを建てました。ところが、それができあがってみると、おばあさんの言うことにはそのお墓があまり大きすぎるから自分には気に入らない、自分などはもっと小さなお墓へはいりたい、そう言っておこったそうです。吉村さんは近ごろになってそのことを思い出したと言って、手紙でわたしのところへ書いてよこしました。そんなところにも、なんとなくばばの人がらが現われていると思いますと、吉村さんの手紙にありました。