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ちからもち
力餅
島崎 藤村
「力餅」研究社、1940(昭和15)年11月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 65,974 字 · 130 页
おばあさんの雷さまは一生の最後まで光っていました。おばあさんはそういう人でした。
もう一つの雷さまはわたしが青年時代に知った同い年の学校友だちです。松浦和平君という青年です。松浦君も、わたしも、十六歳から二十歳へかけての年ごろを白金の明治学院に送ったなかまです。
「松浦の雷は、どこへ落ちるかもしれない。」
そんなことを学校の友だち仲間はよく言ったものでした。そんながらがらした気象の人でしたが、物に「きまり」のいいところがあって、わたしもひどく感心したことがあります。
わたしたちが学校の寄宿舎では、夜の自修時間がすむころから、話の合うものどうしたがいに集まりまして、おそくまで青年らしいむだばなしによくふけりました。どうかすると、寝部屋にまで話しこみに来るものがあります。そこへ体操の教師を兼ねていた舎監が見回りに来て、やがてその舎監のくつおとが寄宿舎の廊下に消えるころになっても、まだ話しこんでいるものがあります。あるものは寝台に腰かけ、あるものは窓ぎわによりかかって、というふうでした。そんなに皆がよもやまの話にむちゅうになっている時でも、松浦君ばかりは自分で眠ろうと思う時が来れば、さっさと寝台の上に横になりました。