轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

やなぎばしものがたり

柳橋物語

山本 周五郎

前編「椿 創刊号」山本周五郎一人雑誌、1946(昭和21)年7月<br>中・後編「新青年」1949(昭和24)年1月~3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,300 字 · 202 页

青空文庫

三

愛しているためなのだろうか。――おせんは今すぐ庄吉に会って、云うだけ云ってやりたいという激しい感情に唆られ、幸太郎がしきりにむずかるのも知らず、なかば夢中でふらふらと大川のほうへ歩いていった。

三

その年の暮に人別改め(戸籍調べ)があった。洪水から初めてのことで、おせんと幸太郎はそこの住人であり、その家の主であることをはっきり認められたわけである。世間の景気は悪くなるばかりで、相変らず親子心中とか夜逃げとか盗難などの厭な噂が絶えなかった。おせんが顔を知っている人のなかにも、田舎へ引込むとか、いつかしらいなくなっているような例が二三あった。だがそれが江戸というものなのだろう、一家で死んだり夜逃げをしたりするあとには、三日とおかず次の人がはいって、同じような貧しく忙しい暮しを始めるのであった。

貧しさには貧しさのとりえと云うべきか、日頃から掛け買いの出来ないおせんは、年を越す苦労もひとよりは少なく、白くはないが賃餅も一枚搗いて、かたちばかりに門口へ松と竹も立てた。――そこへ大晦日の夜になって、それも、かなりおそくおもんが訪ねて来た。白粉のところ剥げになった顔が、寒気立ち、埃まみれの髪を茫々にしたままで、老人の物を直したらしい縞目のわからない布子を着ていた。