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やなぎばしものがたり

柳橋物語

山本 周五郎

前編「椿 創刊号」山本周五郎一人雑誌、1946(昭和21)年7月<br>中・後編「新青年」1949(昭和24)年1月~3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,300 字 · 202 页

青空文庫

四

それがまるで申し合せでもしたように、暮あたりからばったり顔をみせなくなり、道で挨拶をするくらいの人のなかにも、ふと白い眼でこちらを見るような風が感じられるのであった。まえに友助夫妻のことがあるので、こんどもなにかそれだけの理由があるのだろうと思い、しかしそう咎められるようなおちどをした覚えもなかったから、捨てておいても大したことはあるまいと軽く考えていた。

四

元来がそう親しい人たちでもなく、こちらは満足に茶も出せないような生活で、来られれば却って時間つぶしなくらいである。しかしそう揃ってみんなにすげなくされることは、寂しくもあり、ますます孤独になるようで心細くもあったので、折さえあればおせんのほうからあいそよく話しかけるように努めていた。すると一月なかば過ぎのことだったが、柳河岸の新しい地蔵堂の初縁日でおせんも子供を伴れて参詣にいったところ、そこで、まったく思いがけないことを聞いたのであった。――列をなしている人々といっしょに、火のついた線香を買って並んでいると、後ろでげらげらと笑いながら、大きな声でこう云うのが聞えた。

「そうともさ、義理だの人情だのといったのは昔のことで、今じゃてんでん勝ちが大手を振って歩くのさ、すえ始終の約束をしておきながら、相手が一年もいなければもうほかの男とくっつき合ってしまう、