轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

「キング」大日本雄辯會講談社、1931(昭和6)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,213 字 · 325 页

青空文庫

しかし、それよりも、もっと彼を驚かしたのは、路向うから、怪美人の手招きにつれて、のそのそと、側へ寄って来た田舎漢だ。――それは、奉行所の牢内にいるはずのあの唖聾ではあるまいか。

われを忘れて、彼が、ぴくッと、起ち上がろうとすると、同じように、死んだまねをしている老先生の手が、胸の下で、ぐいと、抑えた。

(ああさすがは老先生だ。捕物にかけては、まったく神だ。どうして、この二人が、あとから尾いて来るのを知って、巧々と誘き寄せたのだろうか)

と、耀蔵は、ときめく胸の中で、今さら、塙江漢の六感のするどさと、その鬼謀に、舌をまいていた。

怪美人の玉枝は、まさか、さっきからの老先生の狂態が、自分をひきずる操りの糸だったとは夢にも気がつかない。――彼女は、今夜、彼女たちが奉じる悪の一党の首領が、その黒幕から指令するところがあったので、奉行所内に忍びこんで、唖男と、掏児の新七とを、外部から、牢の合鍵をもって、やすやすと、破獄させて来たのであった。牢をまちがえて、郁次郎の藪牢に近づいて、その姿が、花世に生き写しなために、あわれな、明日は斬られる獄人の彼の眼に、恋人の幻覚をえがかせた罪なわざも、まったく、この玉枝だったのである。