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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
ほんとにしろ、いやだけにしろ、いろんな人をとおすところに本はおかないものだという教訓がここにふくまれて居りますね。うちの茶の間には置場がなくて万やむなく二つ本棚をおきますが、それにはカーテンがかかっていて、それも実におかしいカーテンよ。というのは、こっそりあけてなんか迚もみられないの。というのはね、この頃、ハリ金、金棒なしですから画鋲でとめてあってね、布がおもいからうっかり手をさわるとすぐポロポロにこぼれてとれておちてしまうのよ。素晴らしいでしょう。文泉堂もその中までは見られませんからね。一つは日本文学史関係の本棚、一つはまだちゃんと整理してなくて、ガチャガチャ。書斎に人をとおせるのは学生時代だけでしょうね。
なるほど、こうやって机に木綿の布をかけるのは妙案です、本当に楽よ、手がこすれてもキューキューしていたくなくて。それにきょうは私一人でまだ派出婦来ないから、黙っているのもいくらかいいらしい。浩子さんは、ものを考えつづけている人の顔に馴れないからキゲンわるいのかと心配するだろうと思って、下にいると、ついつとめても話していたから。何だかこうやって黙っていると、すこしおなかに力がたまって来るわ、益軒の「養生訓」