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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
に、おしゃべりするなということが多分ありました。それは当っているわ。
この本箱に『支那女流詩集』があります。女の詩人はすくなかったのね、各時代を通じて二三首ですって。支那では歴代の集、「唐詩選」、「三体詩」、「唐宋詩醇」のようなものには一つも女の作品はいれなかったのだそうです。やっぱり支那ね、あんな魚機のような作家もいたのに。
ゆで玉子をたべながらチラリチラリ頁をくりますが大して面白いものなし。ところが妙なことで思い出しますが、戦国時代の一人の女のひとが「秋の扇とすてられたらば」という意味の「怨歌行」という詩に、新しい斉の素(真白い練絹)の鮮潔霜雪のようなものを裁って合歓の扇となす。団々として明月に似たり、君が懐袖の中に出入し動揺して微風を発す。云々。団々として明月に似るというの面白いし、そういえば、私たちの小さかったとき支那団扇のまねをしたダエン形の絹団扇があったわねえ、あなた御覧になったかしら。絹のふさなんか一寸ついたのが。
今年は、軒に絵のあるギフ提灯もつけてみるのよ、大した甘やかしかたでしょう? 季節のその位のことぐらい。夏は夏をうんとたのしんで勉強しなくては、ねえ。