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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
こういう風なんでね。こちらは。
お母さんは急に思い立って、三田尻のどこかへ前のおかみさんとお詣りです。たまよけの御守りがあるそうで。それをもらいかたがた。自己慰安ちゅうのじゃろうのあんた、と笑いながら。
一つ吉報を申しあげます。ここのあの恐るべきノミはどういうものか今年は姿をあらわさず、私の助りかたは一とおりでありません。きっと家じゅう清潔になったからなのね。タバコやと店との間に水色レースのカーテンがひらひらしていたり、店と台所との区別にのれんが下っていたり、あちこち改良よ。向う座の四畳半も南だけ開いて風が台所の方からだけとおるから、いくらか真夏はあついかもしれないが落付いた小じんまりとした部屋になって居ます。きれいに納めたらなかなかいいわ。いまに、こっちの子供たちがふえると、あすこがおばあちゃんのおへやになるのですね。別に建てるよりずっとまとまってようございます。出入りにもいいし。お母さんが本箱のこと云っていらしたの、本当に一つあった方がいいわね。いろいろのものがこの頃はすっかりそろっている、でも本棚は一つもない、そういうのはよくないから。林町と同じことで。