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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
そういう殺風景な駅のフォームにオフィスがえりの娘さんたちに交って立っていると、目の前の東日会館の屋根で朝日ニュース。ナマムギ町から発火して忽ち漁師町をヒトナメにして百三十軒全焼、と電光ニュースが話してゆきます。生麦と云えばこの間まで野沢富美子の居たところです、その一家はどこかに家を建てたそうです、その家はやけなかったのかしら。火災ホケンなどということをあの酒のみのおとっちゃんは考えているかしらなどと、考えました。ものをまるきり持たなかったひとが、持たない苦労から持つ苦労に変ったとき、どんな気がするでしょうねえ。そんな風に変って行って、しかし野沢富美子の心の飢えはどうみたされているのでしょうね。あの娘の本の中(「長女」)に「根っからの不良少女でないかぎり結局は親の云うことにしたがわなければならない」(それは売られてゆくことよ)という文句があってそれも忘れられません。「根っからの不良少女でない限り」とそういう正当な抵抗が対比されているところに、ああいう環境の深い浪曲性があるとも思われます。その痛ましさを彼女たちのために感じている批評はありません。
茶の間のタンスを本棚におきかえる話ね、まだ実現しないのよ。