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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

08 一九四一年(昭和十六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页

青空文庫

ひどいでしょう? 暮のギリギリ迄私忙しくて布地を寿江子に買わしたら一枚分しか買わず。やっときょうまわったらそれは売れ切れてしまっているの。寿江子たちどうして時々ああして変に上の空なのでしょう。まるで気取って歩くために行って来るみたいに用事の中心をいいかげんに忘れて。若い女の上の空性、実に私はきらいよ。何とかちょいと鼻を鳴らすとその場はごまかして。何だかズルリとしている。その不気味さ。そしてこれはきっと勤労生活をしない娘にひどいのだと思います。(ここであなたは苦笑なさりそうね。私は、そうひがむのよ。ハハム、上には上があると見えるね、と。そうでしょう? ちがうかしら)頭の機敏なこととそういうところでキッチリしていないこととは一致しないようなところ。自分の興味と結びついたことについては正確機敏なところ。一つの近代娘のタイプですね。否定的な。

七日の朝、あらアやっと来た! というお恭ちゃんの叫びとともに三十日づけのお手紙着。よかったこと。ネズミがたべたのでなくて。きょうもしずかな暖い日でした。あれから銀座へ一寸まわって、子供たちへおみやげ買って、永福寺の近くへ行きましたが、町の様子がすっかり変ってしまっていてびっくり。