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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

「何も心配することは、ありゃしない。こっちにいて、いくらでも日本の小説を書けばいいんだ。外国の作家でも、こっちにいて小説をかいているのは珍しくも何ともないよ」

ベラ・イレッシュは亡命してモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)に来ているハンガリーの小説家だった。彼の写真と作品が小説新聞の特輯として発行されているのを伸子も買った。イレッシュは亡命して来ている小説家だった。イレッシュは小説だけを書いていた人ではなかった。故国のハンガリーで革命のために活動して、その結果、その収穫をもって、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)へ来た。自分は、日本でどういう風に生活していただろう。

伸子は、山上元が、何かの思いちがいをしているならばわるいと思った。彼が、伸子について何かを知っているとすれば、それがむしろ不思議だと云えるくらいだった。伸子は日本のプロレタリア文学運動にさえ無関係だったのだから。

「本国で、何かちゃんと活動して来たのなら、こっちで、小説をかいても役に立つかもしれないけれども――御存知だと思うんですが、わたしは、そうじゃないんです」

「そりゃよくわかっているさ。