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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《平の将門(たいらのまさかど)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 頁

青空文庫

男女は、岸と、舟の上で、後朝の惜しみを、くり返していたが、やがて、客の舟は河中に、女は、岸に立ち残った。

「あ。……?」

小次郎と、その客と、思わず、視線をあわせてしまった。――それは、従兄の常平太貞盛に、ちがいない。

貞盛も、小次郎の姿を、しかと、見たように思われる。小次郎は、理由もなく、胸さわぎを、覚えた。

「御存知なのですか」

草笛にきかれて、小次郎は、

「うム、仲の悪い、従兄なんだ。……あの男、たびたび、ここへ来るのかい」

「淡路さんのお客さまです。月に、二度か、三度ぐらいは、きっと、見えているようですよ」

草笛は、小次郎が、貞盛の従兄ときいて、なお、信頼をましたようであった。

宿へもどると、純友を始め、ゆうべの仲間は、みな起きていた。不死人は、しきりに、もう一日、ここで遊ぼうという説を主張したが、それでは、浪華から四国への船便に、また七日も待たねばならぬ。いずれまた、上洛するから――と、純友たちは、ここで旅装を調えた上、やがて、二艘の船に乗り別れ、大河のうえで、西と東へ、袂を分かった。

遊女たちも皆、船の上に、日傘をさし並べて、淀の流れの中ほどまで、一行を送りに出た。