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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《平の将門(たいらのまさかど)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 頁

青空文庫

君見ずや

彼が、こう覚ったのも、滝口へ移って後、偶然、左馬寮の門前で、彼とすれちがったので、はっと思いついたのである。

その時も、貞盛は、

「お。……」

と、遠くから、軽く、小次郎の会釈を、眼でうけたきりで、大容に行くてへ向いたまま、去ってしまった。

以後、禁門の内では、自然、貞盛と行き会うことも多かったが、貞盛はつねに、貴公子然と構えて、滝口の平武者などと、親しみのあることは、恥みたいな顔つきだった。

君見ずや

衛府の武者生活は、小次郎に、苦痛ではなかった。曠野の野性に、むすびついて、彼の体躯は、いよいよ逞しくなった。

さらに、皇城内の生活は、彼の心に、新たな野望をめざめさせた。何をするにも、位官等級の差別がある。自然、小次郎の意中にも、栄達の欲望が、頭を擡げ出した。

精励した、勉学もした。何をしても、他の兵には、劣るまいとした。

特に、調馬――馬をあつかわせては、左馬寮、右馬寮を通じても、滝口の小次郎に及ぶ者はないといわれた。

四年の後、彼は、七位ノ允にまで、登った。

その四年目の春。

久しぶりに、また、伊予の藤原純友が、上洛した。――そして、純友が滝口へ誘いに来たので、連れ立って、遊びに出た。