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たいらのまさかど
平の将門
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《平の将門(たいらのまさかど)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 頁
うつろの館
あたたかい人々、あたたかい言葉、あたたかい家中の酒宴。小次郎は、心も肉体も、愛撫と労りに浸りきって、眠りについた。
だが、翌日。――この巨大な構造の中の一部屋に坐って、あらためて、
「これが、父から遺されて、自分が家長として、これから営んでゆく家だ――」という、覚悟と、感慨をもった時、小次郎は、なぜか、いいしれない、空しさと、佗しさを、洞のように感じた。
父の良持がいた頃の館とは、まるで違う。その父が死に、十六で郷を離れた頃の館ともなおちがう。こう空虚なのは何だろう。
変らないのは山河だけだ。また、古い柱や梁や門だけであった。変りすぎる程、何かが変っている。
うつろの館
起き抜けに、彼は、広い館や柵門を、一巡した。たくさんな土倉ものぞいた。けれど、以前はそこに充ちていた稲もなく、武器もほとんど失われている。
あんなに多かった召使たちも、数えるほどしかいない。それも皆、ほかへ行き場のないような老朽や弱々しい病者ばかりである。
「蝦夷萩のような女奴もいない。……」
彼は、奴隷長屋の前の空壕をのぞいた。逃げる奴隷はいないので、そこは、芥捨て場になっている。