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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《平の将門(たいらのまさかど)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 頁

青空文庫

右大臣忠平

賭けるのも、稲だの、毛皮だの、布だのといった物ばかりだ。

ここでも、彼は、眼をくるめかせた。銭がまるで石ころみたいに扱われていることもだが、もっと彼を昂奮させたものは、赤裸な人間の欲心をつよく描いた彼ら同士の顔つきであり、その語気と語気の火を発するような遣り奪りであり、また、殺気立つばかりな闘争の光景だった。

右大臣忠平

大人たちのするのを、傍観しているだけでも、小次郎は充分に、血を遊ばせて、退屈をわすれていた。

――が、やがて、銭の手もとも夕闇にまつわられて灯が欲しくなりかけた頃。

「牛飼の衆。お客人方いずれも、お座立ちと見えまするぞ。輦寄せへ、そろそろ、立ちならび候え」

と、奥の者から触れて来た。

それとばかり、勝った者も、負けた者、一せいに出払って、おのおのの牛輦を曳き出して行った。あわただしい轍の啼き軋みに、まだら牛の斑が宵闇をよぎり過ぎたあとは、糞も蠅ももう見えない。どこから紛れてくるのか、遅桜の片々が、晩春の印影を、わずかに描いているだけで、泉殿のあたりであろうか、蛙の声が遠く聞える。

小次郎は暗がりで、何やらむしゃむしゃ頬ばッていた。邸側から供人たちへ出た弁当の余りを拾ったものらしい。