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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《平の将門(たいらのまさかど)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 頁

青空文庫

胸中の一人物

胸中の一人物

玄明の妻子や召使も、また、豊田の内に匿まわれた。

同時に、この人物の密告が、将門を驚かせたことは一通りでない。

いや豊田、御厨、大葦原、石井などにある彼の一族をして、

「油断はならぬぞ。……いつのまにか、貞盛めが、また常陸へ潜りこんでいるというぞ」

とばかり、すべてに、ただならぬ緊張を持たせた。準戦時体制に入ったように、川すじには哨兵を立て、夜は夜警の兵を布いて、

「――ござんなれ、貞盛」

という将兵の眼光であった。

では、藤原玄明が、どういう密告をここに齎したのかといえば、それはただ、右馬允貞盛が常陸にいるというだけのことでしかない。

しかし、常陸との国境は、一衣帯水だ。将門にすれば、それだけでも、枕を高うしてはいられない。警戒の理由は、充分にある。

さらに、その後、玄明の手によって、貞盛が常陸で何を企んでいるかという輪郭は、追々に、明らかになった。

常陸の国司(長官)藤原維茂と、貞盛とは、切っても切れない間である。――貞盛の姉は維茂の妻だった。

この義兄の子息に、為憲という者がある。貞盛とは、叔父甥仲だ。

為憲は、文官の父親には似ず、弓馬の達者で、常に、国庁の兵を、私兵のようによく動かし、わが家にも、子飼いの武者をたくさんに養っている。