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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《平の将門(たいらのまさかど)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 頁

青空文庫

門から門へ

「あっ。いけねえ」

と、身をひるがえして、方角を更えたとき、小次郎の体は、彼の腕から振り捨てられ、大地に平つく這っていた。

脚に二本、肩のあたりにも一本、矢が立った。小次郎はその後、なにも知らなかった。気がついたときは、猪檻のような、臭い、狭い、まッ暗な、牢格子の中にいた。

門から門へ

そこは、王朝官衙の八省のひとつ、刑部省の門内にちがいない。

省内には、贓贖司、囚獄司、五衛府、京職、諸国司などの部局が、各構内にわかれ、各、庁舎をかまえて、衣冠の官吏が、それらをつなぐ長い朱塗り青塗りの唐朝風な歩廊を、のんびりと、書類などかかえて、往き来している。

かつては、弾正台もあったが、今は廃され、代るに、検非違使庁が、設けられ、近頃になっては、刑部省行政のうちで、もっとも活溌な一機関となっていた。

いうまでもなく、ここの管下では、巡察、糺弾、勘問、聴訴、追捕、囚獄、断罪、免囚など、刑務と検察行政のすべてに亘っている。――禁門外の京中はもちろん、畿内、全国の司法も視、地方には地方の検非違使を任命してある。

「おいらは、罪人じゃない。何も、悪い事はしていない」

小次郎は、昨夜から、気がつくと同時に、自分の不安に、自分でいい聞かせていた。