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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《平の将門(たいらのまさかど)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 頁

青空文庫

途上の難

と、弓を張り、楯を並べて、待ち構えた。

一軍を柵から遠く出して、始終、物見を放ったり、馬の脚を馴らしたり、闘志満々たる意気を示していたのは、いうまでもなく為憲で、

「あわれ将門も、ここへ迫らば網の魚だ。この為憲の下に、常陸には常備の強兵三千が、いつでも事に備えて錬られているのを彼は知らぬとみえる」

と、あたりの味方へ、豪語を払っていた。

しかし、諜報によると、将門の軍勢は、およそ四、五里も先に兵馬を止めて、どうやらそれ以上には前進して来るもようなく、夜営の準備までしているという。

「兵数は、どれ程だな」

と、為憲は物見へたずねた。

「ざっと、千騎程かと見えます」

「なに、千人。なんの事だ」

と、為憲は大いに笑った。他国へ侵攻するには、少なくもその国の常備以上な兵力を以て向うのが常識だ。こけ脅しな――と若い為憲は、それだけで、もう将門の力を、充分に見縊っていた。

以後の物見は、夕方に迫っても、何の変化も告げて来ない。

彼は、兵を分けて、要地要地に埋伏させ、やがて郎党数騎をつれて、国庁の本営へ帰って来た。

すると国庁の広場に、覊旅の人馬が一群れ、夕闇の中でまごまごしていた。