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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《平の将門(たいらのまさかど)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 頁

青空文庫

「そうか。おまえはまた、羽鳥の叔父や貞盛などが、何かやり出して来やしないか――とそれを心配しているのだな」

「折々、いやな噂も聞きますので」

「聞けば聞き腹で、おれも時には、むかつくが、しかし、奴等が何を策動しようと、先頃の上洛により、おれは正しく、太政官の法廷で、訴訟に勝っているのだからな。中央の政府がすでにおれの正当を認め、法律に照らして――叔父共が横領をくわだてた領田の地券は、これを一切、将門に返せ――と判決を下しているのだ。奴らとしても、これ以上、どうにもなるまい」

「けれど、人の心は量れません。それでなお、叔父御さま達が遺産を返してよこさなくても、もう決してお腹を立てて下さいますな。私は、何も要らないと思います。これ以上には」

「そうだ、これ以上にはな」

将門も、共に、思う。妻のことばは、聡明であり、また生命を愛する者の声だと思う。

事実、今ほど幸福に盈たされている時はない。訴訟に勝って、彼が、郷土に帰って以来、彼の人望は、郷党たちから、いやが上にも高められている。

(良持殿のあとを嗣いで、良持殿にもまさる坂東平氏の棟梁よ。ゆく末、東国の諸州を締めくくる人物は、あなたを措いてはありませんぞ)