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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《平の将門(たいらのまさかど)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 頁

青空文庫

将門は、思わず、悍馬の手綱をしぼった。

木彫の人間像は、二体とも、坐像である。衣冠束帯のすがたで、台座の横木には、あざらかに、こう書いてある。

家祖高望王、尊霊

故、平良持公、尊霊

――つまり平氏の先祖と、将門の亡父の木像とを、どこからか持ち出して、陣頭に押し進めて来たわけだ。

将門が、ちょっと、たじろいだ様子を見ると、木像陣を作して来たその一群は、また、声をそろえて、

「畏れろ、畏れろ。畏れを知らぬか」

「高望王の尊像に」

「さきの良持公の前に」

「射るや、矢を」

「懸るや、不敵に」

「畏れろ、将門っ」

と、相手の耳もつんぼにしてしまおうと計ってでもいるように、喚き囃した。

そして、ザッザ、ザッザと、草の波を分けて、押し進んで来るのを見て、将門は、急に馬を退げて、意気地なく、ためらい出した。

――と見て、木像の前にいた前列が、

「将門、くたばれっ」

と、急に、弦を鳴らした。四、五本の矢が、将門の青白い顔を的として、びゅっと飛んだ。

がばと、将門は、馬のたてがみに打っ伏した。迅速だった。馬は尻を刎ね上げて、くるりと、廻った。とたんに、将門は、ムチを加えていた。――それこそ、一目散といってよい彼の姿であった。